研究内容
京都府立医科大学内分泌・代謝内科学教室では、内分泌・代謝疾患を対象に、内分泌学、糖尿病学、臨床栄養学に関わる医学研究を
行っています。
医学研究へのご協力のお願い
京都府立医科大学付属病院 内分泌・糖尿病・代謝内科で外来診療を受けられた 患者さま・ご家族の皆様へ
下記課題では、京都府立医科大学付属病院 内分泌・糖尿病・代謝内科で診療を受けられた患者さまの診療録や検査結果を調査させていただきたいと考えています。
この研究の対象者に該当する可能性のある方で、診療情報等を研究目的に利用または提供することを希望されない場合は、
下記文書内に記載されている担当者までお問い合わせ下さい。
・糖尿病患者における家庭血圧の重要性に関する調査 (決定通知番号:RBMR-E-349-8):KAMOGAWA-HBP study
・糖尿病患者におけるコホート調査研究 (決定通知番号:RBMR-E-466-15) :KAMOGAWA-DM cohort study
・2型糖尿病における糖尿病治療の体験が患者の心と体に及ぼす影響 (決定通知番号:ERB-C-972-8)
・糖尿病患者におけるラジオ体操指導の臨床的有用性に関する研究 (決定通知番号:ERB-C-1337-1)
・内分泌疾患患者の実態把握と予後予測因子解明のためのコホート研究; KAMOGAWA-E cohort study (決定通知番号:ERB-C-1586-2)
・内分泌・代謝疾患患者の実態把握のためのコホート研究; KAMOGAWA-A cohort study (決定通知番号:ERB-C-1876-1)
・2型糖尿病合併サルコペニアにおける人参養栄湯効果の検討 (決定通知番号:ERB-C-2185-1)
・新規バセドウ病治療ターゲットの探索 (決定通知番号:ERB-C-2114-2)
・術後のインスリン使用予測量に関与する術前因子の検討 (決定通知番号:ERB-C-2114-2)
・難治性副腎疾患レジストリを活用した難治性副腎疾患の診療の質向上と病態解明に関する研究(ACPA-J Ⅱ) (決定通知番号:ERB-C-2240)
・外食・中食・内食の志向性が食行動に与える影響の検討 (決定通知番号:ERB-C-2421-1)
・『メンタリズム』の改良・実用化に向けた有用性の検討 (決定通知番号:ERB-C-2637)
・栄養療法の実態把握のための実態調査研究:KAMOGAWA-N study (決定通知番号:ERB-C-2395)
・血糖変動予測AIの開発 (決定通知番号:ERB-C-2553)
・フレイル合併糖尿病での血清メタボローム変化の検討 (決定通知番号:ERB-C-2553)
・自然リンパ球が2型糖尿病における慢性炎症に及ぼす作用の解明 (決定通知番号:ERB-C-1638-2)
下記課題では、亀岡市立病院と共同研究を行っております。
・人間ドック・健康診断における新たなバイオマーカー探索研究 (決定通知番号:ERB-C-1503)
説明文書
下記課題では、株式会社おいしい健康の利用者様を対象に「糖尿病患者の食事データの解析」を実施いたします。
サービス利用者様のご希望があれば参加してくださった方々の個人情報の保護や、研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で、研究計画及び実施方法についての資料を入手又は閲覧することができますので、希望される場合はお申し出下さい。
・糖尿病患者の食事データの解析(決定通知番号:ERB-C-1638-2)
情報公開掲示文
下記課題では、パナソニック健康保険組合と共同研究を行っております。
・Panasonic cohort study (決定通知番号:ERB-C-2764)
基礎医学研究
統合オミクスによる2型糖尿病の病態解明、シングルセル解析による1型糖尿病をはじめとする自己免疫性内分泌疾患の病態解明を
継続して実施しています。
統合オミクスによる2型糖尿病の病態解明
日本における2型糖尿病激増の原因は、食生活の変化が主要な原因であることは論を持ちません。一般的には欧米化といわれる脂肪酸摂取増加、ショ糖摂取増加が糖尿病発症の原因と考えられています。特に、日本人2型糖尿病に特徴的な腸内フローラのかく乱については、生体免疫栄養学講座内藤裕二教授、摂南大学農学部応用生物科学科動物機能科学研究室井上 亮教授のご指導の下実施し、食生活による影響を明らかにしました(Hashimoto Y, et al.J Diabetes Investig. 2020 Nov;11(6):1623-1634. Hashimoto Y, et al. J Diabetes Investig. 2021 Apr;12(4):476-478.)私たちはこの高脂肪高ショ糖食が糖尿病患者さんの腸内フローラをかく乱するメカニズムについて食―腸連関、腸―肝連関について解明を行っております。
近年、統合オミクスにより、腸管内の細菌叢、そして小腸粘膜臓器が代謝臓器として重要な働きをしていることが明らかとなってきています(Jang C et al. Cell Metabolism 27, 351–361,202)。
我々の検討でも同じ栄養素で構成される飼料を給仕していても薬剤及びプレバイオティクスや機能性食品が併存することで、体内に吸収される腸管代謝産物や栄養素が異なることが明らかとなってきました。たとえば、マウスモデルにおいて水溶性食物繊維の代表であるイヌリンを高脂肪高ショ糖食に加えると、腸内代謝産物である短鎖脂肪酸やコハク酸が体内へ吸収され、同じ摂取カロリーにも関わらず全身性糖脂質代謝が改善しました (Nakajima H, et al. Nutr Metab (Lond). 2022 Jul 28;19(1):50.)。
食事による慢性炎症として、脂肪肝における3型自然リンパ球の役割を明らかにしました(Hamaguchi M, et al.Front Immunol. 2021 Mar 15;12:648754.)。さらに、食事による小腸での炎症や、薬剤及び機能性食品による抗炎症効果によるインスリンシグナルへの影響も明らかになってきております。例えば工業的脂肪酸と考えられているトランス脂肪酸による小腸での炎症発症機構を統合オミクスを用いて明らかにしております(Okamura T, et al. Front Immunol. 2021 Apr 29;12:669672.)。
病態解明のみではなく、新しい治療法の提案として、エリスリトールやグアーガム代謝産物であるサンファイバーがこの小腸での慢性炎症を抑制することを発見し報告しております(Kawano R, et al.Int J Mol Sci. 2021 May 24;22(11):5558. Okamura T, et al. Nutrients. 2022 Mar 9;14(6):1157.)。
これらの食―腸連関の解明には、マウスモデルや細胞モデルも欠かせませんが、ヒト試験も欠かせません。内分泌・代謝内科学教室では統合オミクスを用いた基礎研究とともにこれまでの強みを生かしたヒト試験も継続して実施しています。
また、我々は肝―筋連関に注目したインスリン抵抗性の病態解明を継続して実施しています。サルコペニアは第4次「対糖尿病戦略5ヵ年計画」でも重要視されています。内分泌・代謝内科学教室ではかねてより福井道明教授が男性ホルモンの2型糖尿病の病態形成における役割を明らかにしてきましたが、2013年より男性更年期モデルのおける脂肪肝疾患の形成(Senmaru T, et al.Metabolism. 2013 Jun;62(6):851-60.) および、テストステロンの補充に加えたエストラジオールの補充がもたらす抗炎症効果(Okamura T, et al. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2020 Jun 1;318(6):G989-G999.)を動物モデルを用いて明らかにしております。これらの研究を通じて、miR23b-3pがRNA干渉によりサルコペニアに抵抗するカウンターレスポンスとして働いていること(Okamura T, et al. J Endocrinol. 2020 Mar;244(3):535-547.)、さらにはLet-7e-5pがIGF2BP2を制御して、筋萎縮を惹起することを明らかにしました(Okamura T, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Dec 24;12:791363.)。 また、かねてより2型糖尿病の病態モデルとして用いられてきたDb/Dbマウスでサルコペニアが発症していることを明らかとし(Okamura T, et al. J Clin Biochem Nutr. 2019 Jul;65(1):23-28.)、脂質代謝障害がサルコペニアを悪化させる病態を統合オミクスを用いて明らかにしています(Banba R, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022 Feb;13(1):574-588.)
シングルセル解析による1型糖尿病をはじめとする自己免疫性内分泌疾患の病態解明
SIRS-CoV2に対する研究の活性化から、抗原特異的T細胞の研究手法、および、ヒト免疫細胞を直接研究するヒト免疫学が活性化しています。
内分泌・代謝内科学教室では、KAMOGAWA-DMコホート研究参加者から免疫細胞の提供を受け、最新鋭のBD Rhapsodyの技術を用いて、1型糖尿病の病因となる自己反応性T細胞の解明を実施しており、早速今年度に第一報が国際誌にアクセプトされました(Okamura T, et al. Cells. 2022 May 12;11(10):1623.)。