研究内容

免疫内科学

京都府立医科大学免疫内科学教室では、膠原病・リウマチ性疾患の病態解明やよりよい診断・治療法の開発をめざして基礎研究・臨床研究を行っています。基礎研究では特に膠原病で高頻度に見られる臓器合併症である肺線維症モデルを用いた研究や、関節リウマチのモデルマウスを用いた研究を数多く手がけています。また、膠原病・リウマチ性疾患の患者さんはお一人お一人で病状や、合併症の起こりやすさ、治療薬に対する反応性などが大きく異なるため、画一的な診療では不十分です。そこで、患者さんから取得させて頂いた検査試料や診療記録をもとに、個々での病態を明らかにし、合併症や治療薬に対する効果を予測することを目的とした臨床研究を実施しています。

基礎医学研究

1 Allograft inflammatory factor(AIF)の機能解析

ラットの心移植に伴う慢性拒絶反応において検出された分子であるAllograft-inflammatory factor-1(AIF-1)は、強皮症の皮膚や肺組織に発現していることが知られていますが、その病態での役割は十分解明されていません。我々はこれまで関節リウマチや慢性GVHD マウスモデルによる硬化した皮膚の単核球や線維芽細胞にAIF-1 が発現し、AIF-1 刺激により単核球からのIL-6 やケモカインが分泌されること、線維芽細胞の増殖・遊走を生じさせることを報告してきました。現在は、肺の急性炎症や線維化病態でのAIF-1 の関与に焦点を当てて研究を行っており、それぞれの病態における関与が示唆されるデータが得られています。今後はこの分子をターゲットとした新たな抗炎症ならびに抗線維化治療薬の開発に繋がることを目指し、さらに研究を進めています。

Allograft inflammatory factor(AIF)の機能解析

2 Sphingosine-1-phosphate(S1P)の炎症および骨代謝における役割の解析

スフィンゴシン1リン酸(S1P)は、細胞膜に普遍的に存在するセラミドから合成される脂質メディエーターの一種であり、細胞内で合成・分泌されautocrine/paracrineで周囲の細胞に働き、また一部は細胞内でセカンド・メッセンジャーとして作用する。その受容体にはS1P1-5までの5つのサブタイプがあり、リンパ球などの免疫担当細胞をはじめ様々な細胞に発現しており、その発現の差異により細胞の増殖・分化・遊走・アポトーシスに影響を与えることが知られている。これまでに我々は肺線維症における線維化のプロセスにS1P3シグナルが重要な役割を果たすことを示している。現在はS1P3ノックアウトモデルを用いて、関節炎および骨粗鬆症におけるその役割の解析を行っている。

Sphingosine-1-phosphate(S1P)の炎症および骨代謝における役割の解析

3 線維化における炎症-凝固連関についての解析

血管内皮の傷害に起因する凝固系の亢進は炎症を惹起し、炎症はさらなる組織破壊と凝固反応を引き起こすという炎症凝固連関の概念が知られていますが、近年肺疾患の病態にも関わっていることが注目されています。我々はマウスの肺線維症モデルおいてHMGB1やトロンビンの発現が亢進しており、これが肺胞マクロファージによるTGFβ1の産生や、肺線維芽細胞の筋線維芽細胞分化に関与している可能性を明らかにしました。さらに、リコンビナントトロンボモデュリン(rhTM)をマウスに投与することで、肺線維症の病態が軽減されることも明らかにしました。rhTMはすでにDIC治療薬として本邦で承認され、ヒトの肺線維症に対しても臨床効果を有する可能性がいくつかの臨床試験で報告されており、今後広く臨床応用されることが期待されます。

線維化における炎症-凝固連関についての解析

臨床研究

1 関節リウマチにおける新規バイオマーカーの探索 (多施設共同研究)

関節リウマチ患者さんの病状の把握には、関節の診察や患者さんの感じておられる痛みの聴取が重要です。一方で、客観的な指標として血液検査で得られるバイオマーカーも重要と考えられておりますが、現在広く用いられているCRPや赤沈、MMP-3といった検査項目は、関節炎以外の病状や、使用している薬剤による影響を受けてしまいます。本研究の目的は、真に関節炎の活動性を評価できる新規のバイオマーカーを同定することです。方法としてBLOTCHIP-MS法(プロトセラ社)を用いてリウマチ患者さんにおける各種治療前後での血中バイオマーカーペプチドを探索しております。現在、多施設共同研究として多くのリウマチ患者さんからの採血検体を提供いただき、検討を進めております。

2 関節リウマチに対する生物学的製剤治療前後での関節MRIによる有効性評価
(MIYAKO試験:ブリストル・マイヤーズ株式会社との共同研究)

造影MRIは、リウマチ患者さんの関節に生じる滑膜炎、骨炎、骨びらんを一度に評価できる検査法です。アバタセプトの治療を受けた患者さんを対象として、治療前後に両手の造影MRI検査を受けて頂き、MRI画像所見をスコア化し評価を行ったところ、開始1年後には平均滑膜炎スコアと平均骨炎スコアは統計学的に有意に改善し、平均骨びらんスコアは悪化していないことがわかりました。とくに11%の患者では、骨びらんスコアの改善も確認されました。また、治療開始1ヶ月時点でのSDAI改善率が、治療1年後の骨びらんスコアの変化量の独立した予測因子として検出されました。以上の結果を国際誌に論文報告し、現在も更なる検討を行っております。

Kukida Y, et al. Int J Rheum Dis. 2018.

3 膠原病診療におけるサイトメガロウイルスの再活性化についての観察研究

膠原病に対しては免疫抑制療法を施行しますが、日和見感染症の一つであるサイトメガロウイルス(CMV)の再活性化による感染症状には注意が必要です。CMV感染症のスクリーニング検査である、CMV抗原C7-HRPが陽性となり、CMVの再活性化が確認された膠原病患者さんの臨床データを後方視的に解析したところ、CMVの再活性化がみられた際に、(1)口腔カンジダ症を併発している、(2)低ALB血症がある(≦3g/dL)、(3)C7-HRPの値が高い(>5.6/10万細胞)といった所見があると、その後CMVによる感染症(症状や臓器障害を伴うもの)にまで及ぶリスクが高くなることがわかりました。また、このような患者さんはCMVの再活性化がみられるまでの4週間の間に経時的に血中のリンパ球数やアルブミン値が徐々に低下してきていることがわかりました。逆に、こういった因子を有していない場合にはCMVが再活性化しても抗ウイルス薬の使用を要さずに自然に改善することも期待できます。本研究の結果により、免疫抑制下に生じる日和見感染に対して一律に対処するのではなく、患者さんの抗ウイルス免疫機能や栄養状態の把握が重要であると考えられます。以上の結果を国際学会および英文誌にて報告いたしました。

Kaneshita S, et al. Mod Rheumatol. 2018. Epub ahead of print.

4 皮膚筋炎における急速進行性間質性肺炎進展の予測因子についての観察研究

皮膚筋炎に合併する間質性肺炎は、しばしば急速進行性間質性肺炎という致死的な病型をとることが知られておりますが、早期治療によって予後が改善しうるため、その進展予測は大変重要です。近年、類似した病態である特発性肺線維症の急性増悪において、凝固系マーカーがその予測因子として有用であることが報告されており、間質性肺炎を合併した皮膚筋炎の患者さんの臨床データを後方視的に解析したところ、診断時の凝固マーカーAPTTがその後の急速進行性間質性肺炎への進展の予測因子となりうることが判明しました。本結果は国際学会で報告しており、今後さらなる詳細な検討を行う予定です。

Sagawa T, et al. APLAR Congress 2018.

5 顕微鏡的多発血管炎の肺病変についての観察研究
(京都府立医大、京都第一日赤、松下記念病院、本学放射線科学教室との共同研究)

ANCA関連血管炎の臨床像には人種差があり、本邦では欧米と比較して顕微鏡的多発血管炎が高頻度で、肺胞出血や間質性肺炎、気管支拡張症などの肺病変をきたしやすいことが特徴です。とくに気道病変については、①気道における慢性炎症が先行し、ANCA産生・血管炎の発症につながっていくという説と、②気道病変自体が肺の血管炎の結果として生じているという説とがあり、ANCA関連血管炎の病因を考えるうえで注目を集めています。当科でも、顕微鏡的多発血管炎の患者さんを対象とした多施設共同研究を実施し、発症時の胸部CT画像により検出できる気道病変の有無と臨床データの関連について後方視的に解析を行っております。本研究の結果は国際学会にて報告しており、現在論文作成も進めています。

Kida T, et al. Mod Rheumatol. 2019. Epub ahead of print.

6 自己免疫疾患合併例へのアレルゲン免疫療法の有用性の検討

ダニやスギなどに対するアレルゲン免疫療法が保険診療となり、当科でも治療を開始しておりますが、自己免疫疾患合併例に対する有効性と安全性についての報告は多くはありません。アレルゲン免疫療法が自己免疫疾患の活動性や免疫学的パラメーターにどのような影響を及ぼすのかを解析しております。

7 膠原病における皮膚病理と臨床的フェノタイプの関連性の検討
(本学皮膚科学教室および人体病理学教室との共同研究)

全身性エリテマトーデスや強皮症、皮膚筋炎といった膠原病疾患の多くは皮膚に何らかの病変を及ぼします。これらを生検して得られる情報は診断において極めて大きな意味を持ちますが、その病理組織像は必ずしも定型的なものではありません。そこでそれらの皮膚病理像と患者さんの臨床的フェノタイプの関連性について解析を行い、疾患活動性や治療反応予測につながりうるか検討を行っています。

8 全身性エリテマトーデスにおける免疫フェノタイプの解析

近年、新規の免疫抑制療法の開発により全身性エリテマトーデスの患者さんの治療成績は大きく進歩しています。しかし同一の薬剤であっても個々人によって治療反応性は異なり、画一的な治療では十分な治療成績を期待することは難しいと考えられます。当教室では、2017年に全身性エリテマトーデスに対して認可された生物学的製剤であるベリムマブ(抗BLyS抗体)など新規治療を受けられる患者さんを対象として、末梢血リンパ球サブセットと疾患活動性評価指標の変化について解析を行っております。これにより薬剤の治療反応性が最も期待される患者集団を同定し、治療による免疫学的な変化についても検証することを目的としています。

9 副腎不全がリウマチ性多発筋痛症の経過や治療にもたらす影響についての観察研究

リウマチ性多発筋痛症は高齢者に多くみられ、ステロイド治療が奏効する疾患ですが、ステロイドの減量に伴う再燃率が高いことでも知られています。また、ステロイドを長期に服用した患者さんには二次性の副腎不全の割合が高くなります。筋痛症の再燃は筋痛や倦怠感などの症状、臨床検査における炎症反応の上昇に基づいて判断されることが多いのですが、ステロイド離脱期に生じる二次性副腎不全の症候と類似しているため、これらが混在している可能性を考えております。リウマチ性多発筋痛症の患者さんを対象として、治療離脱期における副腎不全の割合や、副腎不全の有無が治療や疾患の経過に影響を及ぼすかについてのコホート研究を行っております。

 

その他、当科では患者さんに適正な医療を提供できているかを振り返り、診療の質を向上することを目的として、下記のような研究を行っております。
関節リウマチ患者さんの治療成績についての観察研究
肺疾患を合併する膠原病患者さんの診療経過やバイオマーカーについての観察研究
非結核性抗酸菌症を合併する関節リウマチ患者さんの予後についての観察研究
膠原病における初発・再燃時や、感染症治療時のリンパ球サブセットの変化についての観察研究
膠原病関連肺高血圧症の診療状況調査

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